前回の記事では、講演会の内容についてお話ししました。
今回の記事は、スタッフの萩原が取材を行った討議ルームでの議論の内容をみなさんにお届けします(濃厚な内容だったためかなり内容を省略していますが、ご勘弁を)。
萩原が取材に入った討議ルームは予備校講師と高校教員が参加、経歴も作問経験もバラバラです。ベテランの先生が「学びたい!」と大変謙虚に意気込みをお話しされていて、自己紹介の段階で「これはおもしろくなりそうだぞ!」と感じました。
素材文の感想として挙がったのが「まさか高校入試で出されているとは!」ということ。そうなんです。実は講演会の最中に都内では有名な難関高校の入試問題に使われていた素材文であることが明かされていたのです。普段高校生相手に教えている先生方の視点では、中学生がこれを読むというのが意外だったようです(実は根岸は中学受験でも出題されると思っていたらしく……)。
討議ではまず各先生がコンセプト(対象生徒像、どの場面で扱われるテストなのか、作問中の悩み)を発表し、一人ずつ批評します。
「新指導要領を意識して作問をした」「京都大学の入試問題を意識した」とさまざまなコンセプトの作問が並びます。それぞれの先生のカラーが出ていることは解いてみればわかりますが、作問者の意図を共有することによってさらに理解が深まりました。
討議では作問の技術面についての話がいくつか出ました。ニュースレター会員のみなさんに作問をする上で念頭に置くべきトピックをいくつかご紹介しますね。
- 字数指定はどうしたらよいか?
- 複数テキストや会話形式の問題を用いること
- 問い方を少し変えると、解答者のもつ印象が激変する
字数の指定はどうしたらよいか?
前回の講演会のご紹介では、要素の数ごとに大体の字数が決まってくる、というお話をしました。今回の討議に参加された先生の中で「90字程度で答えなさい。」と設定している方がいました。自分が模範解答を作った際に、他の段落や他の文章との行き来が必要なことを踏まえたうえで実際に具体的に書き表すと90字ほどになったそうです(作問したら何種類か解答例を想定するのはとても大切です。よい姿勢だと思いました)。
問題を解いた他の先生もみな90字前後になったとのこと。「だから、自分だったら少し幅をもたせて100字まで可とします」という方もいました。字数を増やせば増やすほど自由度が高まって難易度は跳ねあがりますが、採点基準がしっかりと決まっていてどの要素を入れてほしいのかきちんと設定して幅をもたせるのも一つのやり方ですね、という議論になりました。
また、解く側が長い記述問題では試行錯誤する必要もあり、訂正する時間もかかることを想定すると、ある程度字数に幅をもたせて許容範囲を広げることも考慮に入れると良いという話も出ました。
もう一つ、配点のバランスも考慮しなければなりません。冒頭でご紹介した京大を意識したという設問では、「あらすじはもちろん追うけれどアプローチの仕方が多様にあり、好きなように書くことができるが過不足なく解くことが要求される」ように作問したとのこと。おかげで採点基準が複雑になっていました。しかしそれが難関大学対策のために思考の柔軟性や論理性を測る作問だったのです。このように、生徒の実態把握とともに、「受験生に適切なレベルの問題」を出せるようにすることが求められます(と言うのは簡単ですが実際にやるとなると難しいですよね……)。
複数テキストや会話形式の問題を用いること
チャレンジャーがいました。素材文と評論と組み合わせて複数テキスト形式の問題を作った方が。作問勉強会の良いところですね。定期考査では出題を躊躇してしまう思いきった作問でも、試験的に作ってみなさんに吟味してもらえれば、実現性を高めていくことができます。
「何と組み合わせればよいかわからず、初期段階で複数テキストは諦めた」と仰っていた方もいました。そうなんですよね。素材文自体が難しいのに、さらにそこに他の文章を組み合わせて作問するとなるとグッと難易度が上がります。それでも挑戦した若手の先生、素晴らしいと思います!