複数テクストについて質問です。チャレンジして定期考査で出してみますが、生徒は不慣れだからか複数テクストの問題を避ける傾向にあります。あんなに頑張って作問したのに、と苦い気持ちになります。何かいいアイディアがあれば教えてください。よろしくお願いします。
こんばんは。メイジャーステップの根岸です。Xアカウント:@DiceK_Negishi
久しぶりに、質問箱にいただいたご相談に解答します。
ずいぶん前にいただいていた質問なのですが、あちこちのイベントの告知とレポート記事の執筆に紛れてほったらかしにしてしまっておりました。大変申し訳ないことです。失礼いたしました。
今回なぜこちらの質問に答えようと思ったのか。
それは、ちょうど今回の質問が #現代文作問勉強会202408 でも話題に上がった内容だったからです。
しかもちょうど今号でお届けしようとしていたテーマと重なったというタイミングもラッキーでした。
そこで、今号では#現代文作問勉強会202408 のレポートも兼ねて、複数テクスト作問の労力とコスパについての議論をお届けします。
レポート第1弾はこちら↓
出題者のコスト、受験生のリスク
今回の勉強会でも、複数テクストにチャレンジした先生がいらっしゃいました。
今回のレギュレーションに複数テクストを使用することは指定されてはいません。素材文だけを使って作問してもいいところを、果敢にチャレンジしていく姿勢はそれだけで刺激的ですね。
その議論の中で興味深かったのが「労力」という言葉です。「労力」という言葉には二つの意味があります。
それは「生徒が読解にかける労力」と、「作問者が作問するときにかける労力」です。
複数テクスト問題の生徒の労力とは?
生徒はメインのテクストを読むだけでもかなりのエネルギーが必要なのに、サブテクストを読み解く労力がかかります。
複数のテクストを読まなければ解き進められない問題に時間をかけることは生徒にとってはリスクが高いですよね。その結果「逃げ」が生じて、複数テクストの問題を後回しにする、もっといえば「捨てる」生徒も少なくないのではないでしょうか。
作問した先生はそういうのはやめてほしいと思うでしょう。しかし、生徒から見れば点を取るためにはきわめて合理的な選択です。つまり高得点のための「テスト戦略」です。
根岸も予備校の授業ではこうしたテスト戦略の重要性を熱心に言って聞かせます。もちろん本当に実力があれば解けるのだから、「捨て」の判断をしない実力をつけるのが最優先ですが。それでもやはり得点するには戦略的撤退のオプションが必要です。
しかし、テスト戦略であっても点を捨てることには変わりありません。また、複数テクスト問題は多くの場合配点が高い。配点の高い問題をみすみす捨てるのはもったいないですよね。
どうにか生徒がかけた労力が報われる作問にしたいところです。
複数テクスト問題の作問者の労力とは?
一方、作問者はそんな生徒の気持ちも織り込んで作問しなければなりません。生徒が捨てないでチャレンジできるように、全体のバランス、配点を考えたり、問い方や答え方も工夫したり……えらい労力です。
そもそも、複数テクストの作問は第一歩からして大変です。
あくまで本文がメインの文章で、サブテクストは本文の読解の補助にならなければならない。だから、作問者は複数テクストの問題を作るとなれば、本文の内容に則した、関連性のあるテーマの、難易度も適切な文章を探すことから始めなければなりません。
見つかったとして、次はどのような問いを設定するか、しかも、その読みは本文の主旨からはみ出てはいけません。
そこにバランス調整が乗っかってくるわけです。
複数テクスト問題の作問は一筋縄ではいかないですね。根岸のような長いことこの仕事をやっている人間でも苦労します。
#現代文作問勉強会202408 参加者の感想
このように、作問者も読解する生徒も大変なコストをかけるにもかかわらず、それに見合う結果が得られるかどうかわからないという不安がそこには生まれます。
先生は、工夫して作問しても生徒がこちらの意図通りに取り組んでくれるかどうかわからない、それどころか捨ててしまう可能性もある。
生徒は複数テクストの問題を捨てるべきか、捨てたら何点失うかを計算します。それはリスクを回避するためだけれど、心理的な負荷がかかります。
このすれ違い、齟齬について、勉強会の参加者からはこのような意見が出てきました。
採点基準を見れば配点は高いため、問題を解く労力に見合っているとは言える。その一方で読みが深まったのかと言われれば疑問が残る。
複数テクストの出題が目的化してしまっているのではないか。今年度の共通テストの第3問、実用的な文章が出題されるが、模試の結果を見ても時間が足りないと感じる。どのように指導していけばよいのか難しい。
作問者としては複数テクストに懐疑的な声が目立ちました。
当会主催の勉強会では通称「飛び道具」と呼ばれる作問スタイルがあります。言葉通り奇抜な出題のことで、そこでは概ね複数テクストが用いられていました。会話文、イラストや絵画、法律の条文など、どんな奇抜なテクストをぶつけるかを競っていたような面もあります。
しかし議論が一周回った感があります。初参加の先生でも複数テクストの出題には懐疑的。オーソドックスな作問が目立つようになりました。
試行調査から共テ第3問という変遷への猜疑心みたいなものが皆さんの心にあるような気がします。もちろん根岸にも。
質問への答え:やめたら? やめられないなら……
というわけで、ご質問への答えはこちら。