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◆ 記事の最後に #現代文作問勉強会202303 他、 ◆
◆ 当会主催の勉強会・プロジェクトをご紹介しています。 ◆
◆ ぜひ最後までお読みください! ◆
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根岸講演、一回目の討議についてはここちらをご覧ください。
お待たせしました!二回目の討議とアフタートークの内容をご紹介します!
二回目の討議では、作問するよりも前に作品が面白すぎてなかなか作問できなかったという方や、「飛び道具」を作ろうとして飛べずに終わったという方もいました(笑)
語注はどこまで?
今回のレギュレーションである語注についても討議の中で触れられていました。聞き馴染みのない古風な言い回しや、知らない器具や用語がたくさん織り込まれている今回の素材文、語注の箇所や語注のデザイン、スタイルも様々でした。討議後の報告で他のグループでは話題になりませんでしたので、取材したグループではどのような議論になったのかお伝えします。
今回の素材文、生徒の一定数は読み初めに拒否反応を起こすような文体です(「利休と遠州」をお読みください)。でも、講演会で根岸がお話しし、参加者も語られているように、物語に起伏があってドラマチック、登場人物の心情と信条がとてもおもしろい文章なんです。だからこそ、素材文の魅力を損なわず、かつ見慣れない語句が読解のノイズにならないように、語注をつけなくてはなりません。
討議の中で出たのは
- 語注をどこまでつけていったらよいのかわからなかった
- 知識として持っていなくても前後の文脈から推測できる部分はつけなかった
- 心情語にはつけなかった(おそらくテストの支障になるため)
- 最初は一から十まで(語注を)付けていったけど、大体読み取れるだろうな、と思い後半はつけなかった
- 共通テストのように文章の後ろにズラーっと語注を並べておいて、受験生が本文と語注を行ったり来たりするのは個人的には好きじゃない
- 結局はテストを受ける生徒の実態に合わせて語注を付けることが大事だと思う
という意見が出ていました。究極的には最後の意見に尽きるのかもしれませんが、そこには同時に作問者の「美学」が表れているようです。
そうそう、「美学」と言えば次の話題です。
選択肢のこだわり・作問の美学
みなさんは作問をする上でこだわっていることはありますか?
今回の勉強会で多く出たのは、選択肢の字数を全て揃えること。
実は一回目の討議でも選択肢の長さが議論の俎上に乗りました。曰く「選択肢の構造が違いすぎるため、斜め読みで解けてしまう」「誤答に余計な表現を入れがち」。
こういった「バレバレ」の選択肢は極力避けたいですよね。選択肢がヒントを与える状態になってしまうと、本文が理解できていなくても小手先のテクニックだけで乗り切れてしまいます。不自然さのない誤答肢を目指したいところです。ある参加者は「連体修飾節や副詞が不自然にならないよう細心の注意を払っている」とのことです。至言です。根岸も「連体修飾節って誤答を作りやすいんですよね。安易にキズを作れるんですよ」と申しています。
選択肢の字数は揃えなくても、選択肢の見た目を山なりにする、もしくは階段状にする、といった見た目へのこだわりをもった人がいました。こちらは、どちらかといえば受験生の読み取りの配慮、というよりかは作問者側の「単なる美学」だそうです(笑)
あとは、受験者の心理をよく考えているベテランの先生が、「正答を真ん中に置きがち」と指摘されていました。自分の作問の傾向を分析してみると、正答が真ん中になっていませんか?ちょっとチェックしてみるともしかしたら……○○先生の定期テスト攻略法が立てられているかもしれませんね……ゾッとします。
正答と誤答の位置でも難易度が変わるという話も出ました。微妙な誤答肢を正答の直前に置く、微妙な誤答肢をアにおいて正答を最後に置く……こういう配置でも難易度の調整が可能だという意見もありました。生徒を惑わす嫌がらせのような気もするという声もありましたが、技術的にはおもしろい観点だと思います。
熱の入ったアフタートーク
今回はグループごとにTwitterのスペース機能のスピーカーとして出てきてもらってお話をうかがったあと、我こそは!という方とフリートークを行いました。筆者が印象的だったのは2点。
採点基準って後で変えるのはあり?なし?
- 「基準」なのだから変わってはいけない
- 生徒の答案に見るべきものがあるなら基準を変えて評価するべき
という意見が出ました。根岸からは
- 大規模な模擬試験では、作問者・編集担当・採点チーフを交えた会議で採点基準が決められる。採点当初にサンプリングして基準を修正してから採点がスタートする
- ここで言う「採点基準を変える」は「採点許容を広げる」ということに近いのではないか。「基準」と「許容」は別の概念である
という話が出ました。「許容」という考え方に納得されていた参加者も多かったようです。
試作問題、あれなんなんですか(怒)
共通テストについても話題になりました。先月の記事で根岸も問題点を指摘しました。
討議でもアフタートークでも、参加者から同様の意見が多く出ていました。
- いわゆる処理能力ゲー(速い時間で、多くの問題を解くゲーム)となってしまっている
- マークシートだと時間がなければ適当に埋めてしまい、実力と運の差が小さいため、試験としての役割が果たせているのか
- 読む時間と解く時間の適切なバランスを考えてほしい
- 一問当たりの配点が小さくなるのは歓迎だが、時間が短すぎる
大学受験のスタイルがだんだん下に降りてくることはまちがいないでしょう。適正に国語力を測り、本文の読みができているか生徒も教員も確認できるものとしてテストがあることを望むばかりです。
とはいえ、文句ばかり言っていても仕方がないので対策も考えなければならないですね。頭の痛いところです。
「小論文・現代文の指導スキルを学ぶ会(β版)」より告知です!
なんと、4つも告知があります。先生方のためになるものをたくさんご用意できるように、根岸は日々精進しております。
◆ 教科書を中心とした授業づくり勉強会 2023年2月11日開催!
定番教材には多くの実践研究がありますが、教科書には定番ばかりが収録されているわけではありません。個人の教材研究の積み重ねの中で授業が設計されているのではないでしょうか。また、実践研究で取り上げられるのは派手なものが多いですよね。日々の地道な指導に取り入れにくいこともあるかと思います。教材研究は個人で行うものではありますが、ICTの発達で別の回路が立ち上がってきました。せっかくそんな時代なんですからね、個人でやっていることをもう少し開かれた場でやってみませんか。
ということで、教科書の非定番教材について研究するオンライン勉強会を会員有志と立ち上げます。教科書をベースにたしかな力を育む。教科書を中心とした教科指導のあり方を再検討する会です。
◆ 小論文問題集制作プロジェクト
市販、専売含め小論文の教材はたくさんあります。しかし、ほとんどが知識解説本・考え方の解説本(最高峰は『小論文はじめの一歩』です!)であって、「問題集」と呼べるようなものがほとんどありません。仕方がないから教科書や入試問題の文章にそれっぽい問いをつけて問題を作っている……という声をうかがいます。苦労されてますよね。
そこで、「ないなら作ってしまえ!」と考えて、小論文問題集制作のプロジェクトを立ち上げます。こちらは本当にまっさらな状態で、何一つ決まっていません。それでも興味がある、自分も教材制作に携わってみたいという方は、プロジェクトに入っていただけるよう調整します。ぜひご参加ください。
◆ #小論文添削Start upコース 2023年3月に開講!
多くの方から「小論文の添削の勉強会をやってほしい」「採点をどうやってやるのか知りたい」とのお声をいただきました。「自己流の指導でここまでやってきたけれど、これでいいのかわからない」「生徒にもっと的確なアドバイスができるようになりたい」という前向きな先生方に根岸のスキルがお役に立つのではないかと考えました。
「小論文・現代文の指導スキルを学ぶ会(β版)」では、2023年3月下旬より「#小論文添削Start upコース」を開講いたします。添削コースでは勉強会スタイルを採用しません。少人数の濃密なグループで継続的に討議と実践を重ねることで、添削スキルと添削指導者のマインドを養成します。根岸の指導観に間近に接することができる講座です。
◆ #現代文作問勉強会202303 開催決定!
#現代文作問勉強会 シリーズ、次回は2023年3月に開催します。次回のテーマは「YAコーナーに行こう!」です。図書館のYA(Young Adult)コーナーに置いてある(のにふさわしい)本を題材に作問を行います。
思い起こしてみれば、#現代文作問勉強会 シリーズを立ち上げた2020年、素材文はちくまプリマー新書や岩波ジュニア新書を取り上げていました。いろんなキャリアの方が集まりますから、中学・高校・大学受験どれにも出題されそうなものをピックアップしていました。2022年はやや難しめの文章を選択していたように思います。原点回帰(?)で図書館のYAコーナーに通って素材文を探します。
いずれの会・プロジェクトも2023年1月に詳細を告知いたします。当ニュースレターおよび根岸Twitterにご注目ください。
「小論文・現代文の指導スキルを学ぶ会(β版)」は、私たちみんなでおもしろいことでキャッキャウフフして、気づいたら大きな学び・成果が出るというあり方を目指します。一緒にあれこれ企みましょう。
質問箱やTwitterのDMを公開しています。指導の悩みや素朴な疑問、開催してほしい勉強会(一緒に企画しましょう!)のリクエストも歓迎です。ドシドシ送ってください。会員の皆さんの声が私たちのニュースレター発信の原動力です。
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